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一番見返した場面は、やはり最終回ですね。
サンタクに、トンマンの為に最期にできることを告げるときの、小さな舌打ちが好きです。
そして乱終結を宣言し、ピダムと同じ目線で倒れるトンマンが好きです。

一つの恋が愛に変わった瞬間ですね。
それを命を賭して二人は伝えてくれました。

調子に乗って感想第二弾です。
ずっと書きたかった、「また、逃げましょうか」と呟いたトンマンの心をあれこれ妄想してみました。





 己がただ、「排除されるべき命」だった頃。
 ユシンだけが、この命を惜しんでくれた。
 この命のすべてを負うと、この男は何もかも知った上で誓ったのだ。

 一陣の風に、トンマンは双眸を閉じる。


(……もしあの頃に戻れたら、違う選択をしていただろうか)


 大切な、とても大切な人を喪った。
 目の前で崩れてゆく命をかき集め、僅かな期待に縋ろうとした己を嘲笑うかのように、余りにあっけなく温もりは冷めていった。

 人の原動力として最も即力になるものは、「怒り」だという。
 この小さな刃でも、振り翳せば致命傷になるかもしれない。たとえ倒せなくとも、癒えない傷を残すことはできるはず。

 --力が欲しい。大切な人を守れる力を、得たい。

 ……そうだ。
 そうして、ここまで乗り込んだのだ。
 涙ながらの制止を振り切り、--女としての幸せを振り払い、覇道へと進む為に自らここへ来たのだ。


「ユシン殿、……また、逃げましょうか」


 何と返ってくるのか、トンマンは問う前から予想はついていた。いや、ただ昔のように、この男に叱って欲しかったのかもしれない。
 偉大なる大業を前に容易く揺らぐなと、王としての矜持はどこへ行ったのだと言われたかったのだ。


(……女王としての命は、ここで尽きるのだろう)


 最期までそうあるべきだと語るユシンがいてくれていたからこそ、トンマンにはそれが許されている。

 ゆっくりと、目蓋が下がってゆく。
 冷たいはずの風が、どうしてか柔らかく感じられ、その心地よさにトンマンは静かに身を委ねた。


 誰も信じてはならず、また己を過信してはならぬ、皆が望む"聖君"として在るべき日々。
 その孤独な道でただ一人、信じてくれと、眼差し一つですべてを語る男がいた。
 畏れもなくこの名を、王である者の名を、この耳に響かせたあの声。

 眸を閉じずとも浮かぶのは、幾つになっても子供のように破顔する、無邪気な笑みだった。


 その僅かに開かれた視界に、トンマンもまた微笑みを浮かべる。
 小さく漏れた彼女の声は高く広がる空に混じり、優しい風にそっと浚われた。

 そしてゆっくりと垂れた右手には、かつて心を分け合った指輪が、あのときと同じ侭に美しく煌いていた。


終焉からの風景  end.
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