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こんばんはーv
花冷えな一日でしたね。あ、こっちは桜がいま満開です。
雨でも花弁はしっかり残ってくれてて、まだまだ桜を愛でられそうですね。
はらはらと散る桜もまた風流でいいですよね。
桜の塩漬けのお茶、おいしいですよねー(*´ェ`*)っ旦~

でもって後編です。
ほっちさん、前編読んでくださってありがとうです(*´∀`*)お礼は後日v
あ、ここでは悲恋エンドです。
それでもよろしければ、続きをどうぞー。


素敵なタイトルはお題サイトさまから頂きました。ありがとうございます!





「ねぇピダム。明日、会えない?」

少し前からでしょうか、トンマンはどこか落ち着かない様子でした。
やっと経緯を話をする気になったのでしょう。彼は二つ返事で応えました。

「それでね、少し遠出してもいいかな……?」

もちろん諾です。仮に復路でトンマンが疲れたら背負ってやれいいとさえ、彼は思いました。

「なんだ? また珍しい薬草でも見つけたのか?」
「そ、それは明日まで秘密! 約束だからね。またサンタクだけが来るのはダメだからね。絶対、ぜったい来てね」
「わかった、わかった」

これまでで彼が違えた前歴があるのか、何度も念を押されました。
その度に御付きの一人であるサンタクを使いっ走りに遣っていたので、トンマンともすっかり顔なじみになっていたのです。

じゃぁまたねと跳ねる身体が、茜色の中で長い影を作ります。
彼もトンマンもその眩さの奥で、今日に続く明日を見ていました。
昨日の続きが今日であるように明日もまた同じ一日が続くのだと、そう疑いもせず、ふたりは眠りに就いたのでした。



***


息を切らせたトンマンが駆けつけたときには、すべてが終わっていました。
見開いた大きな目にまず飛び込んできたのは、辺り一面を染める赤色でした。
その赤色の中に、男たちが横たわっています。遠目でも、すでにこの世の者ではないことがわかりました。

「……ピ、ダム……?」

その問い掛けを受け、ゆらりと振り返った彼はとても暗い目をしていました。トンマンが息を呑むほど、それは冷たい色でした。

「……これが目的だったのか」

赤色を滴せる切っ先が、トンマンの喉元へ向けられます。
そうして彼は片頬をにぃ、と上げました。
とうとう、トンマンの膝が崩れ落ちました。

「ヒョンジョンさま、ここは我々が……」
「いや、コイツは俺が始末する」

いつの間にか、花郎と呼ばれる青年たちに周りを囲まれていました。
トンマンの呼吸が荒くなります。
いったい、何が起こっているのでしょうか。

「お前が、山賊の一味だったとはなぁ」

トンマンがいつもの待ち合わせ場所に向かおうとすると、ガラの悪い男たちに囲まれました。
いつも一緒にいる彼を指し、どこの貴族の息子かと訊かれたのです。

「……俺を拐かして、小金でも稼ぐ気だったのか」

トンマンは知りませんでした。たとえ知っていても、絶対に教えません。
そうしてついに苛立った男に殴られ、トンマンは気を失ってしまったのです。

「あいつらは、俺をピダムと呼んだ」

意識を取り戻したトンマンは、もつれる脚を懸命に動かしました。
胸の奥で彼の名を繰り返し叫びながら、やっと辿り着いたのです。

「俺がピダムと名乗った者だけが、そう呼ぶ。--この名を知っているのは、お前だけだ」

違う--と、トンマンは何度繰り返したでしょう。
想いは喉で焼き付いてしまい声にはならず、トンマンは頭を振り続けることしかできません。

花を、渡したかったのです。
彼が欲しがっていた赤い花を。
季節外れに咲くという村人の噂を耳にしたのは、本当に偶然のことでした。
真偽を確かめるべく、トンマンは山の頂きを目指しました。
道ない道を手探りで進むと、……確かに在ったのです。美しく咲くであろう、小さなちいさな蕾が。

「ピダ……、」
「ピダム? 誰だ、それは。俺はヒョンジョンだ」

トンマンを嘲笑するように彼は返り血を付けた頬が歪みます。
そうして向けられた刃よりも鋭い眼差しが、トンマンの心を突き刺しました。

「……ど、…して」

どうして何も聞いてくれないのか。どうして信じてくれないのか。
あの店主と同じだとトンマンは思いました。
一つの出来事で、トンマンのすべてを否定するのです。
一方的に決めつけて、トンマンが守りたいもの、大切なものを壊してゆくのです。

「命だけは助けてやる。失せろ。二度と俺の前に現れるな」
「ピダム、待って! お願--」

けれど、トンマンは信じたかったのです。
ピダムがくれたやさしさを。ピダムがくれたぬくもりを。
ピダムでもヒョンジョンでも、トンマンにはどうでもいいことなのです。
一緒に過ごしたかけがえのない人に、違いはないのですから。

「お前なんか、大嫌いだ」


彼は聡い子でした。
しかし彼のそれは、諦めることから始まったのです。
他人に頼ることを、他人に心を打ち明けることを、他人を信じることを、すべて諦めました。
そうすれば傷つかなくて済みます。
希望と絶望に、振り回されずに済むのです。


***


後日、サンタクが花を付けた一振りの枝を彼に差し出しました。
護衛を振り切り彼が目にしたものは、主の居ない小さな住処でした。
母亡き後、トンマンは独りで生きていました。
何処にでも行けない代わりに、何処にでも行けるのです。

「ヒョンジョンさま……」
「トンマンを捜せ。必ず、見つけ出してこい」

逢ってどうするのかという冷めた感情よりも、彼の手のひらから零れ落ちてしまった"何か"があるのです。
トンマンが持ち去ってしまったそれを取り戻したいのだと、彼は願いました。
強く握った右手が震えます。言葉にならない想いは、瞬きの間に彼の頬を伝ってゆきました。



再会の日は、この日から数年待つこととなります。
トンマンとピダムではなく、インミョンとヒョンジョンとして。
短くとも幼い日を共に過ごした知己としてではなく、一介の芸妓とその客として。



【私は貴方にただ心の中で、静かに愛を贈りたいのです】


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