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「寒い、さむいー」と肩を縮こまらせてつつも、トンマンは降り始めた綿雪に手を伸ばしている。珍しくもない雪に何故かはしゃぐ姿をそれでも可愛いと思うのは、彼氏という立場ではなくとも当然といえば当然なのだが。

「ほら、冷えるだろ」
「待って、もう少しだけ」

差し出した傘から抜け出すトンマンはいまだにクスクスと微笑っている。

「まったく、何がそんなに楽しいんだか……」
「だってね、」

北風がピダムの呟きを届けたようだ。

「ピダムと一緒に見る雪って、なんだか特別って感じがするの!」

どうやらその冷たい風はトンマンの鼻先を赤く染めただけではなく、ピダムの頬までも同じ色に仕立て、颯爽と空高く舞い上がっていった。


ツイッターで話題だった『恋人といる時の雪って特別な気分に浸れて僕は好きです』パロでしたーw
続きからは、ミセンさんが出した課題をクリアしようとする、恋人になって日が浅い豆トンです。
これも嬉しいコメント貰った勢いで書いちゃいました(´>∀<`)ゝ




「いいですか、偶には互いに"引く"ことも覚えなさい」

晴れて恋人という、同じ肩書を持つに至った二人だったが、特にピダムの年下の恋人への甘やかしようといったらなかった。
まぁ本人は意識してやっていないのであろうし、トンマンとて、「もっとワガママを言いいなさい」と(頼まれもしない)アドバイスを送ってやったりで、まったりのんびり見守ってやっていたのだが、頻繁に会いまくっている彼等を見て、ミセンははっとした。

--このままではいけない。ほのぼのでは駄目なのだ。
いまここで、敢えてダメ出しをかまさなくては……!

数多の恋を渡り歩いた恋愛マスターの決断は早かった。会長室を抜け無駄に広い社内を渡り、甥の執務室へと華麗に登場したのであった。


***


そんなこんなで、愛する愛するトンマンの生誕の日を迎えた。
生まれてきてくれてありがとう、俺と出会ってくれてありがとう。お前を愛することを許してくれてありがとう。俺を愛してくれて本当にありがとうと、湧き上がる思い丈を伝える絶好の日なのだが、--ここ2日ほど、ピダムは最愛の彼女とは会えず仕舞いであった。
端的に理由をいってしまえば、どこぞの恋愛マスターとやらのおかげだった。あの母も巻き込んで(というより面白がって)、「たかだが48時間程度ではありませんか」とニヒルな笑みを下賜してくださった。

「いまの俺には、死ねといっているようなものですよ」
「まぁ、この母に殺し文句をぶつけるとは、若いのはその顔だけではないようですね」

お前がいうなとその場の誰もがツッコむ科白も、親子水入らずの豪奢な会長室に軽く跳ねていった。

「あなたがどうしてトンマンの挨拶を受けないのかはもう問いませんが、……覚悟だけはしておいてください」
「今はその時期ではないと、何度も言ったはずだが……?」

眼差しに乗せた言葉が交錯すると、鋭利なまでの睨み合いとなった。が、母が片頬を上げれば、息子もまた同じ顔を作った。
一人残されたミシルは更に笑みを深める。例の件を始動する時が来たと、デスクの受話器を上げたのだった。


***


苛立ちを隠さず進むピダムを、誰しも避けた。誰しもが戦々恐々。当たらず触らず。……遠くでは(そんなクールな顔も素敵ですー!)と、聞こえない黄色い声も上がっていたようだが。
と、そんな中。ピダムの鼻腔を甘い芳香がくすぐった。

--これはトンマンの……!

果たして彼が振り返った先には、小箱を抱え華奢な肩をビクリと震わせた最愛の人が在った。
ピダムは彼女の名を呼ぶ前に動く。先ほどよりも大きな歩幅で、このムダな距離をちゃっちゃと詰めてゆく。

「ち、違うから! ピダムに会いに来たんじゃないからねっ」

約2日間、正確には51時間と28分ぶりに聞くトンマンの声だった。
ピダムを見上げる光を放つ美しい瞳、吐息さえも甘く蕩けそうな桃色の唇。赤いリボンをあしらった小箱を握る左手、目の前で必死に振る右手。動く度に艶を変える黒髪も、ヒラヒラと遊ぶスカートの裾でさえ、なにもかもがピダムの五感すべてを灼いてゆく。

「……俺に会わずに、お前は誰に会いに来たってんだ」

ぎゅっ、と抱きしめておいてその科白はどうかとトンマンは思った。けれども自身の手もしっかりピダムの背中に回っているから、彼女も人のことはいえないのだ。

「私に会ってくれるピダムに、会いに来たの。……私をだいすきって言ってくれるピダムに、会いたかった……」
「じゃぁ俺で間違いないな」
「……うん」


ロビーで拳を握るドヤ顔ミセンは大いに頷いた。まさに俺グッジョーブ! と、デカデカと顔に描かれていた。

「そこ、そこからのアングルで、--そう、そこからぐっとアーップ!」
「はいっ、ミセン社長」

すこぶる絵になる美男美(少)女を、いつの間にか幾つものレンズが追っている。
そんなことを知りも気づきもしない、トンマンが持つチョコレートよりも甘く匂い立つふたりには、すでに周囲のことなど見えているはずもなかった。



【会えない刻ほど、この胸は強く締め付けられる】

(だってあなたは、とてもとても美しく笑うから)
(たとえ幻だと、わかっていても)


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