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2013.07.08 宵ヲ待ツ星
「闇雨」設定で、ピダムお誕生日のお祝いSSです。
出てくる名前や地名は適当ですw
って、そしましたら、予想以上に長くなってしまいましたww
ピダムの誕生日終わっちゃった(^m^;)
いやー、恐ろしく楽しいですこの歳の差夫婦ww

少しでもお愉しみ頂ければ嬉しいですv
「ピダム、ハッピーバースデー!」(遅)


※こっそりな再UPです。
素敵な誕生日プレゼントを頂いちゃったお礼になればいいのですが……(´>∀<`)ゝ




さて我が夫人はどんな贈り物を準備中なのかと、ピダムは浮き足立ってしまう心を鉄面皮の下に押し込み、一先ず朝議を終えたのだった。

kim-nam-gil-bidam1.jpg

「上大等宛てに届いた献上品は送り主と品名だけこちらに明記し、使者共々丁重にお持ち帰り頂いております」

これも毎年のことだ。にも関わらず、毎年贈られてくる量は一向に減らずにいる。
新たな書状に手を伸ばすとピダムは顔すら上げず、諾と頷いた。

「あの、チェジン公の御息女様がお目通りを願っているのですが……」

下げた眉を更に下げ、申し訳なさそうにサンタクが続けた。
ピダムは埋もれた記憶から、ぼんやりとした詳細を掘り出していった。


昨年のことだ。雨が多く、河川の増水による甚大な被害が出た。
当時治水事業を懸案していたピダムは、早速見舞いとの名目も兼ねて視察を重ねた。
神国の民を助けるという大義の元に大掛かりな工事を施行することと相成り、ピダムの最終的な目標は勿論、徐羅伐での治水にあったのだが、ついでに幅を利かせる瓊州領主--シェジン公にも大きな貸しをも作ることに成功したのだった。
すべての責任者はピダムである。
当然瓊州領主と会合する機会も増え、そのときに紹介されたのがその「娘御」だ。
……城内で幾度か顔を会わせただけの女がわざわざ徐羅伐まで何の用だと、ピダムは訝しんだ。


「用件は聞いているか? 瓊州での報告は、貴族どもに目立った動きはない筈だが」

何しろこの事業は金と人が多く動く。地方の領主の娘が訴えてくるものを把握できない今の状況を打破すべく、ピダムの脳内では様々な策が既に練られていた。

「はっ? えっ、貴族……? ……いえいえいえ、上大等! ユンファ様はお祝いの品をお渡ししたいとお待ちになっていらっしゃるだけです!」
「……毎年同じことを繰り返して言う程、私は気の長い人間だと思うか?」

少しばかりの緊張を走らせた分、脱力と共に怒りも湧いてくる。

「でっ、ですがユンファ様は上大等にお会いできるまでは帰らぬと仰っていらっしゃいます。そ、それに……」

ちら、と向けた目線でピダムは続きを促してやった。

「ユンファ様はたっ、大変な美女でいらっしゃいます」
「だったらお前も瓊州に行け。そして二度と私の目の前に現れるな」

第一、ピダムは名も顔すら覚えてはいなかった。そんな女に食指が動くわけがない。
それ以前に、どれ程の数の女がいようと、ピダムにとって"女"とはただ一人を示す言葉だ。
サンタクが平身低頭で謝り倒す中、淡々と啓上を纏めた。ピダムにとって、この一件などすぐに消去される些末なことに過ぎなかった。


___1_~15

さてピダムの世界では唯一の女であるトンマン夫人は、宮殿の中心で(密かに)愛を叫んでいる殿君を尻目に、のほほんと夕餉作りに勤しんでおりました。

「奥方様、そちらの付け合せに野菜を添えてお出し致しますか?」
「彩り程度でいいわ。これはこのまま器に盛りたいから」
「そうでございますね。召し上がるときに奥方様が切り分けて差し上げたほうが、ピダム公もお喜びになるでしょうし」
「そ、そうかな」
「ふふふ、刃を潰した包丁をお持ちになったピダム公が懐かしいです」
「そうそう、仕方なく『切れ味の悪い刃物では、却って公主様の手を痛めかねます』と申し上げたときの、あの困り果てたお顔が忘れられませんわ」


まだ婚姻前よりも、もっと前のことだ。献上された菓子を珍しく気に入ったと話す中で、ピダムがぽろりと「そんなに旨かったんだな」と言ったのだ。
なんてことのない会話だ。一刻もすれば忘れてしまってもおかしくない、普遍的な一齣だ。

だが幼いトンマンは二度の後悔を覚えた。
一つは、ピダムに残さずにすべて食べてしまったこと。二つ目はピダムが欲しがっているものを用意できなかったことだった。
ならばと情報を集め、記憶を頼りにトンマンは試行錯誤を繰り返した。
--だが結局はピダムに見つかり、小さな傷だらけの指に眉を顰めた。

「女官長を、ここへ」

冷たい怒りの帯がピダムを覆っている。トンマンはびくりと手を引いた。
振り向いたピダムに髪を労するように、やさしく撫でられる。
けれども彼が何をしようとしているのか、自分の所為で女官たちが責められるとわかっていて、気がつけばトンマンは声を荒げていた。

「わたしがお願いしたの! 皆、お手伝いしますって言ってくれたけど、誰の手も借りたくなかったの。わ、わたしが作ったお菓子を、ピダムに、食べてもらいたかった、から……っ」

泣きたくなかったのに涙が止まらなくなり、トンマンはピダムに縋りつくように泣きじゃくっていた。
「ごめんなさい」「わたしが悪い」とを繰り返していた記憶はある。
それから、「わかったから、泣かないでトンマナ」と背中を撫でてくれたあたたかい手も……。


その印象が深いのか、食事の支度となるとピダムの背がピクリと反応するのだ。
それも「ピダムのごはんは、わたしが用意するの!」という幼い頃からの鉄板な常套句で、万事無問題だ。

「氷室から氷も届いたし、まずまずの出来上がりね。ね、お料理の腕も、もうピダムが心配する必要ないくらいには上がったと思わない?」
「はい、左様でございますね。ですが、『まずまず』ではなく『最高』の仕上がりでございます」
「世辞ではございません。技術だけで長けても意味がないのです。奥方様は、あの日から最も必要なものを既にお持ちになってらっしゃいます」

目頭が熱くなる。トンマンは皆の顔を見渡した。
どの眦もやわらかく円を書き、言葉にはならないやさしさを伝えていた。
ピダムの生誕祝いなのに私が贈り物を貰ってしまったと、トンマンは微笑った。



そして花を活け、卓を設えとトンマンも手を加えていると、突然本日の主役が現れた。
準備段階を見られる程気の抜けるものはない。トンマンは鋭い視線を扉と向けた--が、次に考えていた文句ごと
がばりとピダムに抱きしめられてしまった。
深呼吸を繰り返すピダムの常にない行為に、トンマンもそっとその逞しい背を抱く。
声を掛けようかと迷う内にその唇を奪われてしまい、再び考えていた言葉も四散していった。

「…んっ、……ピダム、何があったの?」
「もう少し」

そう言っては、熱い吐息が首筋を這ってゆく。これで許しては埒が明かなくなることは経験済みのトンマンは、ピダムの耳元でそっと「聞かせて」と囁いた。
効果はあったようで、渋々ピダムの顔が上げられた。

「……詳しくは話せませんが、今日は邪魔ばかりが入るのです。折角あなたが待っていてくれるのに、片付けねばならない件が残っていて……」
「ピダム、私を見て」

ピダムは、一片の隙も見せない冷酷な男とも噂される。
ほんの少しだけ乱れた髪を撫で付ければ、とたんに下げた眦でトンマンに無防備な程の笑みを見せてくれた。
皆が一度この顔を見ればそんな噂など消し飛ぶのに、と夫が誤解される姿を残念に思う。

「ね、ピダム。私が今、何を考えてるかわかる?」
「……え?」
「嬉しいの、とっても。ピダムはあの日の約束どおりに、秘密を作らずに心を分けてくれる。
公務にしろ何にせよ、私に話せないことはこれからもあるでしょう。でも、言えないことを、言えないと言ってくれる。秘密を秘密だと、教えてくれることが嬉しい……」
「トンマン……」

降ってくる唇を、今度は避けなかった。

「この部屋に入るとき、少しでも肩書きを置いてきて欲しい。ピダムは、ただのピダムでいて欲しいの。何かを抱えているのなら、私にもこの両手があるってことを忘れないで」
「あぁ、わかってる。トンマナ……」

そこでまた距離を詰める甘い吐息を、「じゃ、ピダム。お仕事頑張ってね!」とトンマンは無垢な笑みで一蹴した。

「遅くなるからって、抜け出してきてくれたんでしょう? ありがとう。ここの準備が終えたら、私もご挨拶を兼ねて陛下に謁見を。それから--」
「何処に行くのです」
「え、あのそれから、御義母様とお茶をご一緒して、最後に姉上の処へ行こうかと……」
「あと一刻、いや半刻で戻る!」

見送りもそこそこに「だから此処にいて」と書いてある背中に、思わずトンマンは吹き出してしまった。
約束を違えたことのない男がそういうのならば、完璧に設えた姿で帰りを出迎えてやろうではないか。
指を折り確認を怠らないトンマンの頬を、涼やかな風が撫でてゆく。
天へと顎を上げた彼女は、宵を待つ星たちに目を細めた。



***

げんさん、本当にありがとうございますーvv


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