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しまったぁ……!3月25日ってそんな日だったのね……!!

トンマンを甘えさせたーい!ってことで、無理やり記念日と絡めた豆トンですv
手直しが必要だと思いつつ、私も早くお祝いしたいとUPさせて貰います(^m^;)
教えてくださったげんさん、ありがとうございますーv

こんな遅い時間にも拘わらず、どうしてこんなに人が居るのだろうか。
黄色い歓声とはよく言ったもので、少女たちの発する甲高い声に、ピダムの眉間の皺が深くなる。
おおかた自分の背後に芸能人でもいるだろうと、テレビ局までの沿道を彼は鬱陶し気に進んだ。
(なに今の人、めちゃめちゃ格好良いいんですけどー!)
そんな姿が何の疑いもなく芸能人扱いされ確りチェックされていようとは、ピダム自身想像すらしていないだろう。

エレベーターをちらりと見、迷うことなくピダムは階段を駆け上がった。その階数が二桁になる頃、見慣れたスタッフが行き交うフロアに彼の姿は在った。
そこはまさに宴もたけなわ、と言った感を体現したような有様だった。
CM撮影のクランクアップという意味合いもあったのだろう。
記念日を明日に控えたトンマンの為に用意されたケーキはほとんど平らげられており、空き瓶空き缶、大量の肴が所狭しと並べられている。

そしてその主役はというと、隅のカウチで座ったまま眠っていた。
漸く愛しい姿を目に収めたピダムであったが、どうしてトンマンがこの状況に陥ったのかと、背中に不機嫌オーラを発しつつ右眉を跳ね上がらせた。

「あのぉ、トンマンのお誕生日のお祝いが終わってですねぇ」

トンマンと同じくらいの年齢だろうか。
彼女はピダムへと桃色の秋波を送りつつ、躯をくねらせながら彼との距離を詰めようとしていた。

「それでそこに座ったら、なんだか寝ちゃったみたいなんですぅ」

続けて「あのぉ、ピダムさんですよね」彼女の目が獲物を狙うそれになった。
「トンマンとは仲良くさせて貰ってるんです」と本命の自身の話に移ったが、この女が共演者またはスタッフ、もしくは他の誰だかなどと、当然ピダムにはどうでもいいことだ。

ところでこの時、周囲の目は完全にピダムの動向に注がれていた。
なんせ彼は、このCMのスポンサー様なのだ。
そういった意味合いだけでなく、彼の正体を知らない目も多々注がれていた。
ピダムは肩書きなどなくとも、その圧倒的な存在感で視線を吸い寄せる男だった。が、彼にはそんなこともまったくもってどうでもいいことで。
監督はというと、二人の仲を--ついでにピダムの性格も--重々承知していたので、身の振り方は心得ていた。

さて、そんな衆目を集めるピダムはといえば、
(状況からして寝入ってそんなに時間も経っていない)
=(誰も眠ったトンマンには触れてない!)
と、無理やり自分自身を納得させていたところだった。
ただでさえヘアだのメイクだのでやたらトンマンの周りをうろつく輩どもに、彼は自分を抑えていたのだ。これ以上、一秒足りとてここに用はない。
横に倒れることなく器用に頭を垂れる眠り姫の前に、ピダムは片膝を付いた。

「トンマン、……起きられるか?」

顔に掛かった髪を避け頬を撫でてやると、後ろで「キャー!」と悲鳴らしきものが上がった。
何なんだトンマンの目が覚めるじゃないかと、ピダムの目が据わる。起こそうとしていた当人に「煩い」と呟かれてしまっては、彼女たちのやる瀬がない。
ピダムの懸念したとおり、長い睫毛が震えた。

「……ぅん?」

幼さを感じさせる双眸が、ぼんやりとピダムを見詰めている。
ピダムは安心させるように「大丈夫か?」と笑い、さらさら流れる髪を耳に掛けてやった。
悲鳴がまた上がったが、今度はちゃんとミュート仕様になっていたようだ。

「ピダム、ねむたい……」

つれてって、と両手を広げられた。
……あの頃、リビングで船を漕ぐトンマンがベットに運んでと、ピダムによくねだった仕草そのものだった。
ピダムはおもむろに、脱いだコートをトンマンの頭から背に向かって掛けた。

「ほら、確り回してないと落ちるぞ」

首に回された細い腕が、彼の躯をぐっ引き寄せたことがわかった。
この場に残された人々は、固唾を呑んでふたりを見詰めている。
首元に埋められた顔からくぐもった声が届くと、ピダムはすらりとした脚を掬い、そのまま立ち上がった。
正面からは形の良いふくらはぎがちらりと覗いている。その他は、上手いこと大きなコートにすっぽりと覆われた形になっている。
しかし背後からは首に絡まる華奢な白い腕が、ピダムの色気と相まって妖艶な雰囲気を醸し出していた。
誰かが、ゴクリと喉を鳴らした。

「では、これで失礼致します。--宜しいですか?」

宜しいですかと訊きながらも、答えは「はい」か「yes」しか在り得ないではないか。
「勿論です!」と問われた監督はどこか引きつった笑顔でコクコクと頷き、悠々と人の波を割ってゆく二人を見送った。

こうしてこのドラマのような現実の余韻に酔わされた人々の噂に尾びれ背びれが足され、二人の周りがまた一段と騒がしくなるのだが、ピダムにとっては今現在トンマンと一緒に入られる事実の前には、またもやどうでもいいことで。

恋人として初めて迎える彼女が生まれが日。
(日付が変わったその時から、忘れられない一日にしてやるからな)
だから今はまだ寝てろ、とピダムはやわらかい髪へ唇をそっと落とした。


【喜びも哀しみも、すべて君の吐息から生まれる】

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