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ここのところ緋翠さんもお忙しくしてらっしゃるようで、ちょっと心配ですよね。こんなときに脳天気なコメント送っていいのかしら。椿様やあま茶様も、お元気にしてらっしゃいますでしょうか?(´ω`)ノシ

との心配事もありますが、あきさんの新作が読めて嬉しいーvという訳で4月の風の強い日に書いて放置しておりました、ドラマ設定のトンピを引っ張り出してきました。うん、いったいどんな訳だっていう(^_^;)
後半もでき次第UPしますー。



 
 再び風が吹き抜けた。
 その冷たい手は地上のすべての熱を奪い、更に勢いを増して吹き荒ぶ。

「……陛下。……まだ、お戻りにならないのですか?」

 何度目かの同じ問いかけにも、トンマンは微動だにしない。ピダムから伺えるものは、長い睫毛から少し覗く深遠の眼差しだけだ。
 低い唸りを伴って、三度突風が駆け抜けた。楼台を彩る花たちと同じく、頼りなげに鎮座する肢体。
 いっそピダムは無理やりにでもトンマンを腕に抱き、どの様な風にも当てぬよう隠してしまいたかった。
 --風は雨を呼ぶ。
 寒中に比べればまだ暖かいとはいえ、それでも一度緩んだ外気の変調は、容易くこの二つとない玉体に障りを齎すだろう。
 
「……陛下……」

 だがピダムは同時に、トンマンの瞳に映るものが知りたかった。未だ立ち上がろうとしない彼の唯一の主は、この楼台でしか見えないものを見ているのだ。
 再び強い風が、華奢な肢体へと手を伸ばそうとしている。
 ピダムは気配を断ち、慎重に距離を詰めた。
 トンマンに触れようとする指がどのような鋭い爪を持っていようと、すべてこの背で受け止めてみせる。些少な一筋とて彼女の裳裾に残すなど、絶対に許せなかった。

「……花が、」

 轟々と唸る風が煩わしい。けれどピダムは、トンマンから漏れる吐息一つ見逃しはしなかった。

「……花が、散…て…まう……。……は、嫌だ……」

 トンマンから視線を剥がしピダムも同じ方を見遣れば、遠くの木々が波のようにうねっていた。先んじて綻んだ故に、待ち望んだ春を待たずして風に流されてゆく花弁たち。

「--陛下。今日散る花もありましょう。ですが、明日咲く花もあるのです」

 トンマンがピダムを見上げた。今になってそこにピダムがいたのだと気づいたと言ったような、少しだけ見開いた目だった。

「さぁ参りましょう陛下、私がお連れ致します」
「……うん」

 白い繊手が己のものと重なるさまを--自分で手を差し出しておきつつも--ピダムはどこか信じられない思いで見詰めた。

「…っ、陛下! 御手がこんなに冷えてらっしゃるではありませんか! すぐに薬湯をご用意致します。それから--」
「いつもながら大袈裟だな、お前は。そんなに騒ぎ立てるな」

 そうして立ち上がったトンマンに安堵を感じつつ、正体の知れぬ一抹の不安がピダムの胸を過ぎった。

「明日の視察は予定通りに行う。準備を怠るな」
「はい陛下、畏まりました」

 ピダムは振り返り、山嵐が残してゆく爪痕を遠く睨んだ。トンマンの眼差しでしか見えぬものを必死に手繰り寄せ、己の双眸に僅かな残像の欠片を宿そうとするように。

 握り締めた右手には、小さな手の感触が甘く残っていた。


【永遠の花を、あなたへ】

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