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すみません、結構長くなりそうです…!
それでもあと3話くらいですので(…多分)、もし宜しければお付き合いくださると嬉しいですv……ってか、需要ない話ばっか書いてすみません!勝手に感謝企画vとして始めたのに、相変わらず好き勝手やらせて貰っててホントすみません(_ _;)


mukugeさんv げんさんv
うう、お二人ともめっさ優しい……(/_;)
お礼やお返事すら纏められないグダクダさで、ホントすみません……!やぁっとお礼参り(←何気にお気に入りワードw)にお伺いできますーv


このトンマンが寝起きする自称『研究室』はその名に相応しく、どの部屋を見ても実験器具が溢れていた。それは無論、ピダムが今唖然として見詰めている食卓も例外ではなかった。

トンマンとて料理が苦手な訳ではない。むしろ趣味の一つとする程好んではいたが、麓まで行く時間と復路での荷物の重さに加え、食事すること事態忘れてしまう気性故が重なってこうなってしまったのだ。
だが今更誰が来たからとて、意に介するトンマンではない。

「器具に手を触れるな。本家の人間をこの家に入れるな。……後は好きにしろ」

その『好き』の中に「何でもしていい」と「何もするな」の意を受け取ったピダムだったが、「畏まりました」と応じた。
これまでは上から命じられたことを忠実に実行するだけの、さして頭を使わない、ピダムにとっては至極簡単に立ち回れる日々だった。
だがこれからは新たな主からの言葉通り、自分で考え実行しなければならない。しかも一つの失敗が首を切る要因になり得る重いものだ。
そんな中にあって、ピダムは自分でも上がってゆく口端を感じた。
(師匠、ご安心ください。わたしは絶対に、ご期待に背きません…!)


--と、トンマン唯一の従者である少年のキラキラの目がメラメラに変わった頃、彼女は既にピダムの存在を頭の端に仕舞われていた。
途切れることない集中力は外部の音を遮断し、時刻を刻む時計の針は顕微鏡の先の培養時間と細胞の変化にだけ充てられた。
それでも緩む間隙は訪れるもの。そこを狙ったようにノックの音が静寂を割った。

「ご主人さま、失礼致します。お食事の支度が整いました」
「……腹は空いてな」
「駄目です! 失礼ながら、ご主人さまは今朝から一度でも鏡をご覧になりましたか? 顔色は良いとはいえませんし、わたしには少しお窶れのように感じられます。ご主人さまは、ご自分の体調を管理する意識が低いのではないでしょうか。このピダムがお仕えするからには、ご主人さまには今よりも丈夫で健康なお身体になって頂きます!」

(やたらテンション高い若者を相手にするのは疲れるな……)
トンマン自身十代であるにも拘わらず、年寄り臭い感想を呟く。ここに来るに至って、姉を筆頭に色々……それこそ様々な『色々』をこの少年は含まされてきたのだろう。

「……わかった。行く」

途端にパァァと晴れる顔に気付かれぬよう、トンマンは小さく笑みを漏らした。



トンマンはこの生き方を決めたあの日から、心の動きを顔に出すことを止めた。動揺を隠し虚勢を張ることも、無知な振りをした無謀を繰り返してきた。
--という訳で現在のトンマンは、非常に不機嫌ともとれる顔つきになっていた。
無駄に広さだけあるキッチン兼ダイニングルームの端に追いやられた愛機たち(シャーレやら試験管やら)の代わりに、新たに運び込んだであろう卓。そこに鎮座する皿達に目を見瞠ることも、ましてやその味に驚嘆もしなかった。

だがそんなトンマンを盗み見るピダムは、その箸の速度に笑みを噛み殺した。従者としての初仕事が、空になってゆく料理たちによって認められているようで、嬉しかった。
忙しなく動いていた白い繊手が箸を休めた時、当然ピダムはすぐに反応した。

「ご主人さま、新しいスープをお持ち致しましょうか?」
「その前にピダム、そこに座れ」
「……? はい」

ピダムは迷うことなく、トンマンが腰掛けている脚の傍に片膝を着いた。
トンマンの眇められた眼差し、次いで嘆息。
先ほどまでの安堵は消え、冷たい不安がピダムの胸を締め付けた。

「私の足元ではない。お前が座るのは、そこの椅子にだ」

ピダムには、トンマンの意図が読めなかった。主の意図を先んじて読む洞察力への自信はからくも崩れ、どうあっても型にはまらないトンマンが相手では見る影もなくなっていた。

「し、しかし、座ったままではご主人さまの給仕ができかねます」
「水差しは私の手の届く場所にあるし、キッチンまでは歩いて10歩もない。一々、お前の手を借りずともできる」
「いけません! それはわたしの仕事です。ご主人さまの手を煩わせず、快適に召し上がって頂くことがわたしの役目なのです」

ピダムの頭上から、もう一つ嘆息が加算された。トンマンからの視線も、ついにはピダムから外された。
(何か、…何か言わなくては)
ピダムの常識は、主には通じないことはわかっていた筈だ。ピダムはこれまでリサーチしてきた『トンマン』の情報をフル回転で検索する。きっと何かこの場を凌ぐ方法がある筈だ。

「…あの…っ、」
「…あの、な」

発せられた声は同時。ピダムは慌てて押し黙る。
トンマンはどこか居心地が悪そうに、「お前は違うかもしれないが」と続けた。

「私は、一人で食事するのは嫌いだ。……その、食事というものは同じものを一緒に味わうからこそ、より美味く感じられるものだと思ってる。だからな、ピダム」
「はいっ」
「お前の先述どおり、私に快適に食べろと言うならば、お前もそこで箸を持て」
「ですが、わたしがご主人さまと同じ卓を囲ぶのは、不遜に……」
「あくまで逆らうか。それがお前の意思というならば、こんな命を下す私を、お前は主と認めることなどできぬだろう。生憎、私も意思を変える気はない。……お前を送る車を手配してやる」
「ま、待ってください!! すぐに席に着かせて頂きますから!」

(こんなことならば、始めから椅子は一脚だけ用意しておけば良かった)
……しかしそうしていたとして、どの道このご主人さまは『じゃ、隣の部屋から持って来い』と宣うに決まっている。そんな察しが付いてしまう自分を、ピダムは自身で褒めてやりたくなった。

「……美味かった」

ぼそりと呟かれた言葉は、それでもピダムの耳に小さく届いて。
思考を打ち切ったピダムが見上げた先には、真っ直ぐに合わせてくれる目線。その弓なりの穏やかな双眸と、柔らかく微笑みの形に弧を描く桃色の唇が待っていた。

「食材は空に等しかっただろう。店もこの時間は閉まってたんじゃないのか? それにこの最低限しかない道具の中で、これだけのものをよく作れたな」
「いえ、そんな……」

これまでピダムは、褒め言葉とは縁遠い日々を過ごしていた。それは違うと誰もが口にするだろう。だが事実、ピダムは自分を認めてくれる言葉に餓えていた。
滅多に門下を取らないことで有名なムンノの弟子としての自負。それは目上の人間からの賛辞を己を通しての師への賛辞とし、目下の人間からの囁きは、ただのやっかみとしてピダムの耳に受け止められた。
(どうしよう、嬉しい……!)
師から極稀に掛けられる労いの言葉と同じくらい、ピダムの心は弾んだ。

「お前は、私と一緒に食事するのは嫌か?」

頬が緩むのを止められなくなっていた。ピダムは当然「否」と応えた。
やはりそうだ。トンマンは従者の一人ではなく、『ピダム』の考えを求めている。それがたとえ意に介さないものであっても、すべての前置きを押さえた上での本心を、彼女は好としているのだ。

「じゃ、早く座れ。冷めるだろ」
「はい! ではご主人さま、ピダムも頂きます!」

「あぁ」と椀から目を離さずにトンマンは返した。
だがどこか硬い壁が一枚なくなり、主人に近づけた気がしたピダムであった。




おまけ☆

「ところで、これだけの魚や野菜、米はどうやって調達したんだ?」
「はい。店の前で立っていたら女性に声を掛けられまして、余ったからと魚をくださいました。そちらの野菜は売れ残りでいいならと別の女性が譲ってくださり、米穀店では売り物がないから夕食を食べていかないかとのことでしたが、固辞したところ、この白米を分けて頂きました」
「……は?」
「口々に『また来てくれ』と言われました。親切な方が多い村ですが……。事情を聞かれ詳しく話す訳にもいかず、ご主人さまの縁のものだとだけ説明しました。あの、宜しかったでしょうか?」
「……構わない。今度、一緒に礼を言いに行こう」
「あにょ、ところでご主人ひゃま。なじぇわたしの頬を抓るのです?」
「別に。ただなんとなくよ」

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