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ホワイトデーに合わせての予約投稿ですv
頂きました、あき様とmukuge様の感想を読み返すうちに、ものっそい昔に書いた豆トンの初対面シーンを思い出しました。ぼんやり設定の時に書いたもので、ちょっとこれは辻褄合わないなぁと仕舞ってたものでして……(今も『設定』と言えるものではないのですがw)

・ソファは、ワンルーム6部屋程を所有する大家さん
・土地柄、外国人がお客さんに多し
(ドラマ設定を活かそうと苦戦した名残がw)

出稼ぎがポシャり、一瞬踏み逃げを考えたカターン。「国で待ってるご家族の方に、後ろめたくなることをしてはいけません。お家賃は、次に会った時にちゃんと貰いますからね!」と、逆に些少のお金を包んで渡される始末。ソファもトンマンも変わらずニコニコ。駄目だこのままじゃ、僕は僕が嫌いになってしまう。「これは貰えないよ。僕は未だ帰国しない。……だって、君たちも僕の家族だから」

トンマンにとっては、家族=『信じられる存在』であり『自分以外で母を守ってくれる味方』。それと『裏切れない存在』でもあるんだと位置づけるキッカケにもなってます。なので、この作中でトンマンが家族を強く押すもう一つの理由は「大切な母さんの信頼を裏切るんじゃねぇぞ」って意図も入ってます。豆な頃から腹黒ですねw

その後ソファさんは愛娘の学費等々を稼ごうと、週末ハウスキーパーのお仕事も増やしたところが……と、二人の別離の場面も未だ仕上がってませんのに、長過ぎですよねすみません(^_^;)

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初対面ですので、↑ピダム22~3歳、トンマン4歳くらいをイメージしておりますv
今回も例に漏れず変な話ですので、お気をつけてm(_ _;)m あと経営云々は既知の方からすれば矛盾アリだと思います(汗)



 彼としては珍しく、午前様のご帰宅であった。疲れ果てた四肢を投げ出したピダムは、冷や汗をかく古狸共の顔をさっさと脳裏から追い出したかった。



  
 入社早々、出向とは名ばかりのドサ回りを希望したのは他ならぬ彼自身だった。あの女の息子、その色眼鏡が鬱陶しかった。--そして何より、その見えない庇護の檻から抜け出したかった。
 ピダムが順当に職務を消化していく中、--端緒が無かったとは言い難いが--この会社が大口得意先の倒産を機に、融資を受けている金融機関からの猛烈な貸し剥がしに遭ってしまった。資金繰りに奔走する経営陣も、すべてが門前払い。それどころか、得意先の振り出した手形の買戻しを強く要求される始末だった。このままでは連鎖倒産必死の状況に。 
 ピダム自身は解雇すら厭わない身分だったが、仮にそうでなくとも何の危機感すら持てなかったであろう。むしろこの程度で潰れるくらいなら、無くなってしまった方が清々するとさえ感じていた。

 その彼をしてここまで駆り立てたものは、上司のぽつりと漏らしたこんな声だった。

『私は明日から、あなた方に一つの保証もしてやれない。皆には、支えるべき家族もいるのに……!』

 家族--ピダムにとっては縁のない言葉だが、よく耳にした幼い声が余韻を響かせた。

『ここのおうちでくらす人は、みんなかぞくだよ!』

 国籍も年齢も不明な怪しげで厳つい男たちを前にして、その小さな背を母に抱かれながら跳ねる笑顔がそう言ったのだ。だからさびしくない、みんながいてくれてうれしい、と。
 子供は無邪気でいい、皮肉に哂うピダムの膝に、いつの間にかその小さな手が張り付いている。据わった双眸を前にしてもにこにこと頬を上げ続ける幼子に、ついにピダムは根負けした。

「……何だ? 抱っこなら、そこの年齢不詳のパッキン男にでもして貰ってくれ」
 蚊帳の外では指名されたカターンの諸手が挙がり、
「だめ! ピダムがいいの!」
 即、下がった。
「あー…、もう、何なんだ、お前は……」

 仕方なく膝に乗せてやれば、今度は何が不満なのか、ぷにぷにの頬がムッと膨らむ。

「トンマン! トンマンは『おまえ』じゃないもん!」
「はいはいわかった。トンマン、な?」
「うん!」

 そして、ぎゅっと胸に張り付かれてしまった。
 母親であるソファさんが「あらあら、ごめんなさいね」と両手を伸ばしてきたので、ピダムはこの面倒臭いお子様を即刻渡そうとした。

「いえ、大丈夫です」

 が、出た言葉といえば、意思と真逆ではないか。
「えへへー」と見上げられた笑う顔、背を掴んで離れない温もり。柔らかな髪が鼻先を擽れば、子供特有のどこか甘い香りと、眠りを誘うお日様の匂いがした。

 --白い指の背が頬を滑り、額に当てられた。熱で霞んだ視界では、いくら目を凝らしても焦点を結んでくれなくて。
(誰、なの……?)
 
「ね、プリンがあるよ! いっしょにたべよー!」

 ピダムは、はっと我に返った。
 もう十年以上前になるであろう過去の裾野が、不意に目の前を通り過ぎて行く。刹那の記憶との逢瀬は掴めない風にも似て、既にもう何も見えなくなっていた。
 消えてしまった軌跡をぼんやりと目端で追うピダムに、瑞々しい現実はいとも簡単に彼を前へ向かせる。

「ピダム! そこからうごいちゃダメだからね、ちゃんとまっててね!」
「おい、待てって--」

 それはお前が昨日から楽しみに取いておいたヤツじゃなかったのか?3個パックじゃなくてケーキ屋さんで買ったんだよ!ってはしゃいでいたのはお前じゃなかったか?--膝から降りた背に、伸びた右手だけが疑問をぶつけた。

「すみません、ピダムさん。あの子が戻ってきたら控えるよう言いますから……」
「いえ、気にはしていません。ですがまだこちらに来て日が浅い私を、あの子はどうしてここまで構うのです?」
「……あなたが最初にお見えになった日、娘は私にこう言いました。『どうしてあの人は笑わないの? 家族が増えたのに、嬉しくないの?』と」
「ここでは全員が家族だと教えたのは、あなたのようですね」
 
 ソファはちらりと覗かせた目で、電卓を弾き帳簿整理を手助けしてくれるカターンへ微笑を送った。カターンも柔らかい視線を受け、同じ笑みを返す。

「それは彼に訊いてください。私は何も教えてはいません。ねぇピダムさん、古臭い考え方ですが、一つ屋根の下で暮らすのならば、まったくの赤の他人とは言えないでしょう? ……だからトンマンは、寂しくないのだと伝えたいみたいです。少なくともここにいる間は、一人ではないのだとわかって欲しいのかもしれません」

 特にあなたに、ね。と、ソファはゆったりと笑いながら続けた。流石は諦めの悪い娘を育てた母親だ。喰えない性分は確かに受け継がれている。

「あなたは心配ではありませんか? 実は私が変質者で、娘さんを狙っているのかも知れませんよ?」
「あらあら、自分から名乗りでる変質者に出会ったのは初めてです。まぁそう仰るお気持ちはわかりますよ。ピダムさんもトンマンが可愛くて仕方ないんでしょう? ……でも、せめてあと15年は待ってやってくださいね」

 会議、プレゼン、商談等々、向かうところ敵なしのピダムである。その自分を黙らせるなんて、本当にこの親子はいい性格をしている。
 
「それに、ちゃんと名前で呼んであげてくださね。それとも、もう忘れてしまいましたか?」

 案外忘れっぽいですねぇピダムさん、と続けられればダメ押しだ。

「ピダムーー! プリン持ってきたよーーー!!」
「わかったトンマン俺が全部食べてもいいんだな、そうだようなトンマンその為に持ってきたんだよなぁ!?」

 ピダムはどこか据わった目で、飛び込んできたトンマンと対峙していた。

「えぇー!? ピダムはおとななのに、わかちあうセイシンをまなんでこなかったの?」
「あぁ生憎なぁ。トンマン、俺は欲しいものは惜しみなく奪うからな」

 よく憶えてろ、と続けた傍で「じゃあジャンケンしよ。わたしもまけないからね!」と睨み返すトンマン。そして「食べた後はちゃんと歯を磨くのよー、ふたりとも」席を立ったソファに、すかさず「俺まで子供扱いしないでください!」とキッと言い返した--が、フフッと親子そっくりな含み笑いが返ってきた。
 ……どう見ても、負け惜しみのように受け取られている。
 出向先から徒歩5分。通勤距離だけで決めた新たな住処の柔らかい灯りの下で、ピダムは大いに臍を噛んだのだった。



 微睡む僅かな隙間に、様々な顔が浮かび上がっては消えてゆく。皆待っている人がいて、帰りたい場所がある。胸くそ悪い頭取以下然り、あのお人好しな上司以下同僚然り。ピダムにとっては取るに足らない他人でも、誰かにとっては掛け替えなのない大切な人なのだ。

「かぞく、か……」

 ピダムの脳裏に、数十年それなりに顔を合わせてきた『あの人』が決して本心を覗かせない影と共に過ぎて行く。

(……あなたはいつだって、俺を通して何かを見ていましたね)

 欲しかった言葉は、いつだって彼の心の中だけで繰り返すだけだった。今宵もそうだった筈が、唐突にあの声が温度を持って再生された。

『ピダム、おかえり!』

 耳が、全神経が、あの響きの余韻を隅々に沁み込ませてゆく。表裏のない笑顔、拒絶を怖れない小さな手。試しに両腕を広げてみれば、迷うことなく投げ出された軽い身体。

「……ただいま、トンマン……」

 今日は言えなかったな、と思い返した瞬きの刹那で、夢の切っ先がピダムの瞼を優しく塞ぐ。

(あぁ、明日はきっと--)

 ゆったりとした、穏やかな吐息に調和した寝顔がそこにあった。



追記:川野雅之著『中小企業再生完全マニュアル』を参照しました。多謝!(図書館行って何をチェックしてるんだかw)
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