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こんばんはー、六花です。
少し前にちらりと書かせて頂いたのですが、ちょっと勉強しないといけなくなりましてですね。(自主的じゃないところが痛いところですがw)
皆様のところへお邪魔して「うわ、コメントしたい!」って思っても、気持ちばかり焦って闇に葬ってます……(ノД`)

せめてこちらの更新が途切れる前に、豆トンを投下させて頂きます。
ほんの少しですが背後注意ですよー。すみません!



 僅かにできた隙間に濡れた吐息が滑り込み、淡紅色の眦に光る雫に愛しさが募る。
ピダムはもう一度想いを注ぐべく、再び恋人のふっくらとした下唇を柔らかく食んだ。

「…はっ、ぁ……」

 小さく漏れた嬌声は、ピダムの背筋をゾクリと痺れされた。探り当てた舌は難なく見つかり、その仄甘く柔らかい腔内を貪るようにピダムは口付けを深いものに変えてゆく。
 やがて肩に置かれた繊手から力が抜ける頃、シーツの月白に艶やかな黒髪がさらさらと零れ落ちた。その中核に位置する真白い肌に、ピダムは迷うことなく鼻先を寄せた。

「やっ! ……っ、ひゃぁ!」

 夜の密度を増す夜の空気が、刹那にして薄められた。

 はっと我に返ったピダムが見上げると、首筋を押さえ頬を朱色に染めた涙目がそこにあった。どこか性急とも感じさせる情交は、トンマンの心を置き去りにしてしまったのだろう。

 --これが、惚れた女を抱くということか。

 初めて女を味わう訳でもないのに、この手でトンマンのすべてを暴きたくなってしまった。
 躯の奥に眠る熱を引き出し汗に光る細腰を引き攣らせ、忘知の果てに歪む顔が見たい。そしてすべてを重ねた肌に閉じ込めて、曇りのない安寧に微睡んでいたい。
 けれど心が伴わなければ、ピダムが掴めるものは遣る瀬ない虚しさだけだ。それは彼自身が一番身に染みている真実だった。
 自省したピダムは殊更ゆっくりとトンマンの髪を撫で、やさしく言葉を紡いだ。

「トンマン、ごめんな。怖かっただろ?」
「ち、違うってば…! そうじゃなくって。あの…、髭がね、」
「うん……?」

 唇の上の、ざらりとしたそれを指でなぞってみた。

「その……、髭が当たる感触に吃驚しちゃって……」
「わかった。トンマン、……2分、いや1分待ってて」
「へ?」



 ピダムは後悔していた。そこに『おもいっきり』と付けていい程後悔していた。
 
「……トンマン……」
「ぴっ、ピダム…! ほっ、…ほんと……っ! かっ、変わ…、っ!」

 トンマンが腹の底から爆笑している。くの字に曲げた躯で、息も絶え絶えに笑い続けている。
 ピダムは天を仰いだ。……今日はもう無理だろう。

「ん…、ピダム来て。もっとよく顔が見たい」

 「わかった」と言う前に、ピダムはトンマンの傍に腰掛けていた。二人を乗せたスプリングが僅かに撓る。

「本当に、あの頃と変わらないね……」
「そう、か?」

 己の容姿に頓着しないピダムとて、年若と軽んじられることも度々あった。無駄な斥候を忌避する為の変化が口元だけだったとは、些か苦い思いでもある。けれども同じく流れた時間が十代のトンマンに齎した結果は、正しく羽化だった。
 --蛹の頃から魅了されていたのだ。美しく羽を広げた蝶を奪われないように、逃げられないようにするだけでも、こちらは必死だというのに。

「ピダム……」

 トンマンの指が頬を滑ってゆく。触れる熱は心地よく、温もりを溶かした眼差しは何よりもピダムが熱望し続けたもので。

「ね、思っていい……?」

 己を映すトンマンの瞳が、灯りを反射しゆらゆらと揺れた。揺れたと思ったら、穏やかに伏せられた瞬き一つで光の欠片たちが頬を伝ってゆく。
 
「……やっと追いついたって、思ってもいい?」

 高音が混じる声は、応えを返す余裕すらピダムから奪うもので。ピダムは泣き笑う顔に、ただひたすらに頷いた。確りと、背に回されたトンマンの腕が嬉しかった。
 
 力任せに抱き締めてしまいさぞ痛かったろうとピダムが気づいたのは、随分後になってからだった。

 



読んでくださって、ありがとうございましたー!
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