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あのチャミョンゴの続きを完結させたいとチュンチュの性格を探り始め、またもや樹海に入り込んでしまして。いかんと。これはダメだと。じゃぁ角度を変えてみようと「オー!マイレディ」の妄想が始まりました。(えぇ、実はそうだったんですww)

眺めてみればトンピの二次創作というより、二人の名前を借りました名前変換創作になりました(ノД`)
パスを付けようかと悩んだのですが、ここにお越しくださる方はそんなことは百も承知だろうかと(笑)むしろぐだぐだで当たり前みたいな……。(すみませんです)ホント、穴だらけで申し訳ないです。
いやぁでも妄想してる間は、すっごく楽しかったですv



 自宅へ戻ると迎えるのは、いつも暗い部屋だった。
 洒落たランプも幾つかはあるのだが、貰ったときと同じくコードは束ねられたまま。そもそも誰も居ない室内を照らす意味が、ピダムにはわからなかった。

 今日も今日とて、てっぺんを超えてのご帰宅だ。ロックを解除し、ピダムは既にルーチンワークとなった作業を繰り返そうとして--、手を止めた。目だけでなく、全身がリビングに吸い寄せられてゆく。
 正体は、すぐにわかった。
 足元に柔らかく影を滲ませる、ドーム型の発光源を持ち上げる。気づけば、横にカラフルな付箋が貼り付けてあった。
 そこには、いつものように『本日の献立』が美しい文字で続き、そして最後に『お仕事、お疲れさまでした。お帰りなさい』と、短く添えてあった。
 ピダムの耳に届く音は、己の息遣いだけ。料理たちはすっかり冷め、広い一室はすべてに灰墨を混ぜた色で。
 だが、仄かな光がピダムに見せたものは、それだけではなかった。

「……あぁ、ただいま」

 ほんの少しだけ彼は、灯りの存在価値を認めた。




 跳ねた油は繊手へと着地した。その瞬間をはっきりと捉えたピダムは、慌てて冷水へとトンマンを引っ張った。

「あぁ、もう! 気をつけろって言ったろ! 他は? ここ以外に火傷はあるか!?」

 白く細い手に、赤い染みが痛々しい。
 ピダムは、これならトンマンを休ませ自分が調理すれば良かったと思ったがしかし、ここに居合わせて良かったとも思った。
 そんなピダムが繊手から視線を剥がすと、きょとんとした顔が首を傾げていた。

「別に、どこも痛くないのですが……」

 心配してくださって、すみません、と、続けたトンマンは、本当に痛みなど感じてないらしく、赤みを帯びた手を乱暴にタオルで拭いている。それでもピダムは「いいから、後は俺がやるから」と、トンマンを脇に追い遣り、再びコンロに火を入れた。
 「ホントに大丈夫なのに……」と、背を向けたトンマンから聞こえる。

『自覚がないってのが、一番厄介なんですよねぇ。過去と向き合わないと、本当に前へは進めませんよ』

 かつて、幾度も胸をざわめかせた叔父の言葉が、ピダムの脳裏を過ぎった。嫌な予感だけが、胸を占めた。




「おいしい? チュンチュ、もっといっぱい食べてね」
 
 小さな顎が振られると、嬉しそうにトンマンはチュンチュの癖のない髪を撫でた。チュンチュの目が、ちらりとトンマンを映す。だがトンマンが気づく前に、見事なほどにチュンチュは自然と視線を逸した。 
 トンマンが笑いかければ、チュンチュも小さく笑う。ピダムは確信を深めた。

「なぁ、チュンチュ。じーちゃんとばーちゃんと、お母さんがいなくなって、寂しいか?」
「ピダムさん、チュンチュに何を……!」

 トンマンの諫めるような眼差しにもピダムはまったく意に介さず、見上げる円い双眸を静かに見詰める。下がった目線と一緒に項垂れた小さな頭は、こくりと頷いた。

「そうだな。皆にはもう二度と会えない。悲しくて、辛くて、寂しいよな」

 それは誰に言う訳でもなく、呟くような、滲むような声だった。
 チュンチュの幼い瞳が、湖面のように光を反射する。それを認めたトンマンは、ピダムから庇うようにチュンチュの前に出た。

「ピダムさん、こんな小さな子に何を言っているんですか? チュンチュは、やっと悲しみから抜け出せそうなんです。もう、思い出させないでください」
「忘れることなんて、できるのか?」
「……それ、は……」
「できる訳ない。それは、トンマンが一番良くわかってることだろ? それなのに、どうしてすべてを否定するんだ?」
「否定なんてしていません。私はいつだって、チュンチュのことを思って--」
「なぁ……。最近、チュンチュがお前の前で泣いたこと、あったか?」
「そんなの、当たり前じゃないですか。だってチュンチュは、」

 トンマンの眉が寄る。誓ったのだ。……泣き疲れて眠る目蓋に、トンマンは絶対に守ってみせるからと微笑む姉に誓ったのだ。
 喪失を堪えた瞳はトンマンが笑えば、小さく笑い返してくれた。その中に映る消えない陰りをトンマンも気付いていたが、どうしようもなかった。何もしてやれない自分が歯痒かった。だから尚更笑顔でいた。ずっと気づかない振りをしていた。

「両親も姉も死んだって事実から、お前は目を逸らしてるんだ」
「…あ、あなたに何がわかるって言うんですか!?」
「じゃぁ、言ってみて。皆死んだって。もうここにはいないんだって」
「あなたにそんなこと言われなくとも、私自身、嫌って言う程自覚してます!」



 誰も居ない家は、いつものようにトンマンを招き入れた。斜陽が皿で埋め尽くされたテーブルを、暖かく照らしている。
 何もかも、そのままだった。

 『トンマン、お帰りなさい。父さん傘持ってなかったから、書店にお迎えにいってくるわ。帰りにケーキとワインも買って貰うから、楽しみにまっててね♪だったらチュンチュも一緒に行くって言うから、子守に母さんも連れて行くわね。あなたが帰ってくる前に帰るから、メモは要らないと思うけど念のため。じゃすぐ帰ってくるからね!』

 繰り抜かれた時間は、あまりに非現実過ぎた。

「ねぇ、さん……」

 居ない。
 居ない……。
 ……いない。
 どこをどう探したって、あの笑顔と柔らかい声と、やさしい手には出会えないのだ。

(どうして皆ここにいないの? どうして私を置いて消えてしまったの?)

 思い出は生き続けるというが、色褪せない記憶たちが、もう取り戻せない過去を『今』に連れてこいと叫ぶ。
 何も考えたくなかった。
 何かを考えるのが、怖かった。
 独りだと自覚することは、あまりに耐え難いことだった。

(私には、チュンチュがいる……) 

 歩き出そうと、決めた。だが無理やりに引っ張られた心の欠片は、制御できずあちこちにぶつかってしまう。
 トンマンは自分の心に『痛みを伝えるな』と命じた。何も感じなければ、生きてゆける。小さな傷で、一々立ち止まってはいけないのだ。



「なぁトンマン、お前が泣かないと、チュンチュも泣くのを我慢する。わかるだろ? だってチュンチュも、トンマンを守ろうとしてる。だからトンマンに倣って、無理やり笑おうとするんだよ」
「え……」

 くいくいと腕を引くチュンチュは、何かを言いたげに何度も頷いた。次第に眉が寄り、チュンチュの顔はくしゃくしゃになった。

「ごめんなさいチュンチュ……! 私の所為で、お前が--」

 もどかしく首を振るチュンチュは喉を押さえ、ヒューヒューと想いを吐き出そうとしていた。

「ぼくのこと、ばっかり…気にしないで……。……かなしい、ときは、かなしいって、…いって」

 トンマンは目を見開いて、チュンチュのすべてに聴き入った。その頬が濡れていることなど、気づきもしなかった。

「ぼくは、つよいこだから。……おかあさんと、ヨンスおとう…さんの、こだから……。だから、あんしん…して」
「うん、……うん。そうだな。お前は、あの二人の息子だもんな」

トンマンは胸に抱えた温もりを、ぎゅっと抱きしめた。チュンチュもトンマンの背に、小さな腕を懸命に回す。少し離れ、トンマンが濡れた頬を拭ってやると、擽ったそうにチュンチュが笑った。と、そこへ、空気を読まない呑気な一声が投下される。

「ねぇ、トンマン。ご飯おかわり」
「もう! そのくらい自分でよそってくださいってば!」

 と言いつつも、どこか照れくさそうな笑みを見せたトンマンをピダムが見送れば、ムッとしたチュンチュの顔と出くわした。

「あ? なんだよ」
「スケベおやじ。はなのしたがのびてますよ。みっともない」
「んなっ…!」

 このクソガキが、ついさっき迄一言も話せなかったのに、なに流暢に敬語で喧嘩売ってきやがって……! と、ピダムが思わず箸を持ち上げたところでトンマンが戻ってきた。

「はい、お待たせしました。……ピダムさん、そんなにお腹空いてたんですか? お箸振り回すなんて危ないですよ」

 チュンチュの方がお行儀良いです、と続けたトンマンは、「ねーっ」とチュンチュと二人して仲良く首を傾げていた。
 さっきまで二人してえぐえぐ泣いてた癖に……と、しおらしさの欠片もないトンマンに、ピダムは最初から何かを期待した訳でもなかったのだが、それでももうちょっと何かしらのアクションがあってもいいのではないか……と、やっぱりどこかで、彼は何かしらを期待していたらしい。

「はい、ピダムさん。こちらもどうぞ。明日の朝食にしようかと思ってましたけど、これじゃ足りないかと思って……」

 最初の日、ピダムがぽつりと落とした「あ、これ旨いな」との感想を、トンマンは覚えていてくれたのだ。横ではチュンチュが、新しい茶葉を準備していてくれている。

「ん、ありがと」
「……いえ、こちらこそ。…………その、ありがとう、ございます」

 そっぽを向いたトンマンの頬が上気しているのは、淹れたてのお茶の所為ではないだろう。
 ふっ、と笑ったピダムの笑みに釣られてか、トンマンも笑った。とても柔らかい、笑みだった。



読んでくださって、ありがとうございましたv
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