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2011.12.19 纏足の金糸雀
指を、手を、静かに離した。
「え……?」と、小さな懇願が見上げてくる。これ以上は、できなかった。

「トンマン、もう寝た方が……」
「もうちょっと、少しだけでいいから……ダメ?」

も一つ駄目押しとばかりに、やっと自由になった右手を握られた。桜貝のような優しい色の爪先に、再び元の場所へと戻される。
最早ピダムの選択肢は、「はい、若しくは、yes」しか残されてはいなかった。

「ねぇ、知ってる? 肩の凝りって、首にきて目の奥までくるの」

「大丈夫、試験も今週で終わるから!」と、笑顔を振舞ってくれる恋人へ、ピダムができる最大限のことがこれだったのだ。

「……んっ、……ピダム、ほんと上手だね。ちょっと痛いけど、すごく…気持ちいい……」
「………………。……それは、どうも」

欲しい時には言わず、こんなことで聞かせてくれるトンマンが恨めしい。
体調が優れない年下の恋人へ、これ以上の接触を踏み止ませる自制心が恨めしい。

「……はぁ、ピダム……もっと、強くして……」

気だるげな吐息が砕いてゆく理性の欠片を必死で拾い集めるピダムを尻目に、「あー極楽、極楽」と内心ひとりごちていた、トンマンでなのでしたー。


と、何故か〆が「今日のわんこ」的にww
いきなりグダグダな豆トンで失礼しました。こんばんはー、六花です。
「どうですか、もう一軒」とばかりに、どうも風邪菌が油断してた私を無理やり引っ張ってったみたいです(何言ってんだww)
その間中「絶対ピダムに肩を揉ませてやる!そして悶えさせてやる!」と妄想を繰り返し、目・肩・腰の痛みと戦ってました(いやホント何言ってんだww)

えーとですね、続きからは、先日の「チャミョンゴ13話」のなんちゃってパロです。
勿論ネタバレ有りですし、放送から少し間がありましたので、書いてる本人しかわからん話になってると思います(すみません……!)
(補足:ピダム=兵部令 トンマン=令夫人v太子であるチュンチュの姉兼母親代わり)
でもって中身が無い割りに、ダーク色が強いです(汗)
変な妄想ばっかしてすみません……!
やっちまった感満載ですので、すぐに下げるかもしれないです(><)
ちょっとでも抵抗を感じられたら、スルーなさってくださいませー!


 スンマンの脚は主の意思を反映し、僅かなりとも先へ進むことを拒否していた。
 --これは、死へと続く道だ。
 待っているものは、絶望。
 スンマンの失いがたい希望を、死は大きく口を開き嘲笑っているかのように思えた。
 乳房の下に張り付いた冷やりとした刃とは、既に熱を共有している。スンマンは、もう一度袂の上から、それをなぞるように力を込めた。
 刺し違える覚悟なら、ある。

「……スンマン」

 我に返り見下ろした双眸は、スンマンがよく知る穏やかな、柔らかい色をしていた。

「……あね…うえ、」

 決意を知るスンマンの右手に、優しい熱が重なる。そしてトンマンは、ゆうるりと微笑む。
 その真っ直ぐな双眸には、諦めも怒りすら潜んではいなかった。
 スンマンは、それだけでわかってしまう自分が嫌だった。
 堪らなく嫌だったが、その眼差しの意味を受け入れるしかないとも自覚していた。
 
 既にトンマンの魂の半分は、将軍が連れて行ってしまったのだ。
 ……今でもあの咆哮が、スンマンの鼓膜を震わせている。

***

 死地を制した勝鬨が木霊する。
 スンマンは大切な人たちの笑顔を探した。
 誇らしい不敗の軍神、その将軍の腕の中に美しい緋色が見える。
 漸く安堵の息を漏らしたスンマンであったが、不意に、トンマンを見詰める黒衣の男はその笑みを凍らせた。
 
 スンマンが振り返る間に、緋色の鎧が弾かれる。
 一本の矢は、呆気ないほど容易く標的へと向かう。
 刮目した者たちの呑んだ息と、戦慄く女の悲鳴だけが残された。 

 刹那に止まった時間を誰よりも先に動かしたのは、男の唯一の夫人--トンマンであった。当然のように戸惑いもなく伸ばされる腕を、スンマンはどうにか地上へ繋ぎ止める。

「どうかお留まりください! この高さから河へ飛び込まれては、姉上の御身が危ぶまれます!!」 
 --ピダムがっ、ピダム……っ!!
「奥方様、ここは流れが急で御座います。すぐに河下に郎従を遣りましたので、ここはお下がりください!」
 --離せっ!! 何故止めるのだ!! 
「トンマン夫人、どうかお聞き届けください!!」
 --退け!! …早く、早くピダムの元へ行かねば……っ! 
「ピダム将軍はきっとご存命で御座います! どうかここは、お下がりくださいませ!!」
 --私の邪魔をするな!! ピダムは、私が見つける!!

 それはスンマンが初めて目にした、血の繋がりはなくとも"姉”と心から慕う、トンマンの姿だった。
 何よりもスンマンを驚かせたのは、どのようなときにも冷静さを失わないトンマンの聡明な眼差しが、一切の色を排していたことだ。
 もうスンマンの声すら耳に入ってはいないだろう。聞こえていたとしても、言葉として理解されていないのではないか。
 
 --ピダム……! ピダム、直ぐに私もそこへ行く。
 --直ぐに……すぐに行くから、待っていてくれ……!!
 
 トンマンの双眸は、無碍に引き離された伴侶の影だけを、ひたすらに追い求めているのだろう。スンマンを含め3人掛りで拘束しているというのに、それでもトンマンはその手を伸ばし続けた。

 ……だが今日に至るまで、具足一つ見つけることはできなかった。

***

 数日振りに見た空は雲一つ浮かんではいない、あのときと同じ美しい藍色だった。
 その高い天の更に果てまで焼き付けるように、トンマンはその双眸を眇めた。

「……私、……私は姉上を喪ってまで、この国を憂懼する気などは毛頭ありません。すべての元凶はあの女です。姉上の為にできることを、私は諦めたくはありません。どうして、……どうしてお許しなってくださらないのです……!」
「スンマン……。私の為と言ってくれるならば、どうか泣かないでくれ。深い慈悲の心を持つお前になら、安心して民と、チュンチュを任せられる」

 トンマンを見詰めるスンマンの眼差しは鋭く険しいもので、気の弱い男ならばそれだけで逃げ出してしまうほどであった。
 だがトンマンは、それが彼女の涙を耐える術だと知っている。
 --知っているからこそ、愛しくもあり、心残りでもあった。

「……あね、うえ……」
「それに私は、ピダムの元へ向かうのだ。何を恐ることがあろう」

 右腕に添えられたスンマンの手を、もう一度確りと掴む。
 そうしてトンマンは、もう一度微笑んだ。
 戦慄くスンマンの唇がそれでも上向き弧を描くと、トンマンは胸を張って死が待つ場所へと向かった。

「陛下! 共は不要で御座います。大勢で行けば、将軍が私を見つけられなくなりましょう」

 竜を頂く、朱塗りの玉座に鎮座する男が鷹揚に頷く。
 ともすれば、ギラギラと太陽を反射する青龍刀を掲げた男が音も無く現れた。
 がっしりとした体躯の処刑人は卑下た嗤いを浮かべ、踊るように右に左に、トンマンの周りをくるくると舞う。

 王宮は哀しみと怒りで満たされてゆく。
 
 「人」として扱ってくれた、心から敬愛する主への惜別の涙。
 共に命を賭して敵を屠った武士(もののふ)たちの、土を這い爪を剥ぐ怨嗟の涙。
 トンマンはすべてを受け止め、柔らかく吐いた息で双眸を閉じた。

「……私は気が短い、早くせぬか!」

 思わずぎょっとした面持ちの処刑人だったが、それでも刀の背に舌を這わし、漸くトンマンの細い首に焦点を合わせた。
 一度地面擦れ擦れまで青龍刀を下げ、そして勢い良く両腕を振りかざし、風を斬る大きな音が、何もかもを切り裂くように空気を震わせる--筈だった。

「お待ちください!!」

 優雅な所作で立ち上がった少年は、目を見開くトンマンを僅かに一瞥し、真っ直ぐに玉座を捉えた。

「私は本日この場で、トンマン叔母上を娶ります。この者の夫として私から陛下へ、どうか妻の命をお救いくださいますよう、御願い申し上げます!」
「な……っ!」

 死者を送るべく白い装束を身に付けていても、チュンチュの眼差しには哀しみなど欠片も見えない。
 手を取られ、微笑まれる。それが余りにも見慣れた、いつもどおりの微笑であった。
 トンマンの背に、得体のしれない冷たいものが走った。

「……お前…は、何を考えているんだ……!? 自分の立場を……、お前が成すべきことを、わかってはいないのか……?」
「そうですか? 本当にわかっていないのは、一体どちらなのでしょうね。……私は幾度も教えて差し上げたではありませんか。『私はもう、子供ではない』のだと……」

 そうしてチュンチュの元へ浮いた右手は、強く掴まれたようだった。
 痛みを感じることより、間近で見上げたチュンチュの瞳に動きを封じられてしまった。
 トンマンはかつての甥に、初めて恐怖したのだ。
 静かすぎる双眸からは、燠火のような小さくも消えない焔がある。
 それは紛れもなく怒りだった。チュンチュがあのときから持ち続けた、トンマンへの忿怒に他ならなかった。

「叔母上、どうか私の妻になって頂けませんか?」

 ひゅ……と、トンマンの震える唇が描いた言葉は、最愛の男の名だった。チュンチュの眼差しが鋭さを増す。

「これからは私の行く道が、あなたの生きる理由と為るのです」

 『見知らぬ他人』となった少年は悠然と微笑み、トンマンが最期に抱いた祈りを、粉々に打ち砕いた。


纏足の金糸雀  end.




変な話を最後までお付き合いくださり、すみませんです。でも、ありがとうございましたv
ピダムは当然生きてますよー!速攻チュンチュとタイマンですww
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